それでも季節は廻っている

 遅れてきた台風の風は、肌に染みるように冷たくて寒い寒い真冬を思い出させる。
 厚着をしてコートを羽織りマフラーを巻く。体が重くなって上手に歩けない。ぼんやりとした頭で思考する。
 「はて?今年は紅葉した木々をさっぱりみてないぞ」
 もうすぐ秋が終わる。いや、すでにもう終わってしまったのかもしれない。
 窓に写る景色がくすんでいる。静けさが横たわったホーム。電車の揺れる音がやけに耳に残る。気がつけば眠っていた。

 翌日、空を見上げた。透き通るような青と流れる大きな白い雲。不意に日差が目に飛び込んだ。夏をちょっと思い出した。
 
 ゆきさんの家の近くには銀杏並木があったな。隣町の陸橋からは綺麗な夕焼けが見れるだろう。まなちゃんが高尾山に登りたいと言っていた。紅葉狩りはまだ間に合うだろうか?

 秋を見つけよう。冬にストップをかけろ。お前の出番はまだちょっと先のはずだ。